「2025年04月」の記事一覧

「開店と閉店」独り言#3

故郷に戻り、宿泊施設を始めて丸7年が経とうとしています。
安定とは程遠い状況ではありますが、いろいろな方に支えていただいてなんとか営業を続けられています。また、少しずつではありますが、自分が作りたい宿泊施設、お届けしたい旅行のスタイルに近づいてきているのではないかと思います。

この間、ここ富山県氷見市でも多くのお店が開店し、残園ながら少なくない数の閉店がありました。コロナや地震もあり、致し方無い閉店も多かったように思います。
僕らのような地方の町では、新たなお店がオープンすると大きなニュースとなり、メディアや人づてで大きく取り上げられます。一方で閉店となるともちろんメディアで取り上げられることもなく、真偽不明の噂話が一人歩きしたりもします。

同じ店舗を構える同業者として、閉店のニュースを聞くたびにチクっと心を刺されるような感覚になります。ひとつは”明日は我が身”という自戒の念によるもの。もうひとつは”何かできたのでは?”という後悔の念。
自分達のお店で手一杯の状態ではありますが、それでも同業者として何かできることはあったんじゃないか、と思わざるを得ません。小さな町です。みんな知り合いのようなものなのですから。


情報に溢れた社会ではありますが、自分にとって必要な情報を十分に得られているかどうかと言われると、自信を持ってyesと答えられる人はどれだけいるでしょうか。
その町特有の集客施策、業界特有の流通網、困った時に相談できる相手。これらがあればもしかすると継続できたお店もあったかもしれません。自分自身には力はなくとも力のある人を適切に繋ぐことはできたかもしれない、そんな後悔の念です。

分不相応ではありますが、”移り住みたくなる宿”はそんな、人と人との繋ぎ役も務めてこそだと考えています。この町で困ったことがあればイミグレさんに聞いてみよう、宿屋のおやじに聞いてみよう、そう思っていただけるようにこれからも励んで参ります。


宿屋のおやじ

「どんな旅がお好き?」独り言#2

こんにちは、宿屋のおやじです。

ワタクシども、宿屋をやっているわけですから、当然、理想のというか好きな旅行スタイルがあるわけです。それも複数のおすすめ旅行タイプがあり、旅行に行く際は毎回、今回はどのスタイルで行こうか、なんて考えるところからが旅行の楽しみだとも思っています。本日は僕が”旅って良いものだな”と思い始めた頃の旅行スタイルをご紹介します。その名も「オーナー数珠繋ぎハシゴ酒旅」。


ホテルを始める以前、僕は大阪の企業に勤めていたのですが、業務内容上全国各地への出張が多くありました。観光業界に携わる仕事でもあったので、勉強も兼ねて、出張の前後に休みを合わせてひとり旅をしていました。その中で初めての土地に行く際によくおこなっていたのが「オーナー数珠繋ぎハシゴ酒旅」です。
読んで字の如くですが、店から店へオーナーさんの紹介をもとにはしご酒をおこなっていくのです。一番最初にやったのは、沖縄本島の旅行でした。まずは、その土地の有名な飲食街に出向きます。沖縄だと国際通りになりますかね。その中の屋台村に赴き、まずは腹ごしらえと情報収集です。王道の沖縄料理居酒屋、なるべくならば店主と話ができるこじんまりとした、混み過ぎていない店がおすすめ。

まずはその土地の名物料理を楽しみながら(その当時24歳くらいの自分は島らっきょうの美味しさに感動していました)、店主とお話し。観光地の飲食店さんは観光客慣れしていますから、こちらの話したいオーラを感じ取って地域の情報を教えてくれました。会話の中で次のお店のおすすめをお聞きしてそのお店に向かう、ということを繰り返していくという旅のやり方なのですが、これが実におもしろい。
基本的には地元の店主さんがおすすめしてくれるので変なお店は無い。また、「どこどこのマスターに紹介していただいてきました」というと次の店の店主も安心して受け入れてくれます。今、逆にお店をやる立場になってみると、近所のお店から紹介で来られたお客様には、より一層不手際がないように、とどうしても感じてしまいます。我ながら、うまい作戦だったように思います。

それに加え、面白いのは店をハシゴする度に仲間が増えたりすることw
移動するたびにどんどん地元のディープな店へと続いて行き、そこには地元のお客さんで賑わうお店が多くなります。そうすると、そのお店の常連のおっちゃんと仲良くなり、次の店に連れていってもらうなんてことが発生します。また気付けば別の観光客の方を誘って合流したり、なんてこともありました。また当時の沖縄には同年代でお店をやっている人が複数人いて、仕事的にも非常に刺激を受けたことを覚えています。



さて、旅の醍醐味のひとつには「その土地の日常を感じる」ことがあると思います。食や自然や観光名所や温泉だけでなく、その土地に根付く暮らしを疑似体験することは、ある種、別の人生を感じることだとも思います。と、するならば旅とはやはり、自身の人生観や価値観を拡張してくれるものであり、人生に喜びや潤いを与えてくれるものに他ならないと感じるのです。そんな感じの旅の原点があり、観光業というものが本当に好きになったのだなと今振り返るとそう思います。


あなたはどんな旅がお好き?

「宿屋のおやじ」の独り言 #1

こんにちは。
イミグレ代表の松木です。今後は「宿屋のおやじ」という名前で活動していこうと思います。
旅館や民宿の経営者のことを仲間内では”旅館のおやじ”なんて呼んだりします。僕はこれまで沢山の素敵な”旅館のおやじ”とお会いさせていただきました。そんな先輩方に追いつけるように、しかしながら当館は旅館って感じではないので、「宿屋のおやじ」と勝手に名乗っております。
自分の考えや感じたことを家族やスタッフや友達にずーっと話していると嫌われそうなので、誰にも見られていなさそうなこのブログを使って書き綴っていきたいと思います。

さて、そもそも僕がなぜ宿を始めたか。
これは何を隠そう自分のためです。自分が人生をかけて熱中できることをやって人生を楽しみたい、欲を言えばそれが誰かにとってちょっとでも役に立っていたら最高だ、なんてことをずっと思っていました。話すと長くなるので割愛しますが、自分の生まれ育った、控えめに言って大好きな富山県氷見市の良いところをお届けすることをやりたい、それも商売としてやりたい、というのがスタートです。

宿のコンセプトに”移り住みたくなる宿”と大層なことを掲げております。氷見の魅力である食・自然・人の魅力をPRし、移り住みたくなるほどひみを好きになってくれる方を増やしたいという思いを込めております。そんな活動を続けていくと、人口減少が進むこの町の明るい未来にもわずかでも貢献できるのではないかとも思っています。

ただ、どこまでいっても”自分がやりたいからやっている”をということを忘れないように気をつけています。そうしないと、上手くいかない時に他人のせいにしてしまう弱い自分が出てきてしまうからです。他人のせいにした瞬間、その問題の解決策への思考が巡らず、結果どんどんと悪い方向に流れていってしまう。そんな悪循環を避けるための防護壁みたいなものだと思っています。


初回からなんの話をしているか分からなくなってきましたがこんな感じで、”海辺で小さな宿を営む経営者の日記”のような感覚でときたま更新していきたいと思います。

引き続き『イミグレ』をどうぞ宜しくお願いいたします。

-宿屋のおやじ-